日航907便事故 管制官に有罪判決
「原因究明を阻害」全運輸が声明
 4月11日、2001年1月31日静岡県焼津沖で起きた日航907便の異常接近事故で業務上過失傷害罪に問われていた、東京航空交通管制部の2人の管制官に対する控訴審判決があり、第1審の無罪判決を覆し、それぞれ禁固1年6月(執行猶予3年)、禁固1年(執行猶予3年)の判決が言い渡されました。
 この事故は、管制官の便名言い間違いはあったものの、2機とも管制官の(言い間違えた)指示通りに飛行していれば異常接近には至らなかったものであり、管制官の指示とTCAS(航空機衝突防止装置)の指示とが相反したときにどう対応するべきかが明確になっていなかったという運用マニュアルの不備が指摘され、その後改善が図られています。この他にも、狭い空域や、機能しなかったCNF(異常接近警報装置)など、さまざまな要因が絡み合って起きた事故であり、管制官の責任を追及するだけでは、事故の再発防止には役立たず、むしろ有害だとさえ言えます。
 2名の管制官の所属する全運輸労働組合は、この判決に対し、「原因の究明を阻害する」と、下記の声明を発表しました。
日航907便事故控訴審判決にあたって(声明)
 本日、東京高等裁判所は、200 1年1月31日に発生した日航907便事故において業務上過失傷害罪に問われた航空管制官2名に対して、第一審の無罪判決を覆し、有罪とする判決を下した。
 航空管制官を含む交通運輸行政に携わる労働者で組織する全運輸労働組合は、一切科学的な判断に基づかず、はじめから有罪ありきの審理を行った東京高裁の極めて不当な判決に対して断固として抗議する。同時に、国民の生命と財産を守るための事故再発防止よりも、個人の刑事責任追及を優先する捜査当局の対応についても厳しく糾弾するものである。

 全運輸労働組合は、事故発生当初から、当該管制官の便名の言い間違いというヒューマンエラーが主原因ではなく、狭隘な空域構成や航空交通の過密化など様々な要因が複雑に絡み合って発生した「システム性事故」であることを指摘していた。特にTCAS(航空機衝突防止装置)の運用方法の不備について当初から指摘していたにもかかわらず、「言い間違い」というヒューマンエラーのみがクローズアップされ、本来罪に問われるべきではない管制官2名が不当にも起訴されることとなった。

 2006年3月20日に下された第一審判決は、裁判所による東京航空交通管制部の検証など、科学的な分析にもとづいた、極めて論理的かつ明確なものである。一方、控訴審においては、検察側は自らの主張を何一つ立証できなかったばかりか、すべての証人が弁護側の主張を補強し、裏付ける証言を行った。にもかかわらず、東京高裁は検察側の主張に依拠し、「システム性事故」の態様を認めた第一審判決を何ら評価することなく、個人責任追及を肯定したことは、高裁裁判官に当初から許し難い偏見と予断があったことを意味するものにほかならない。

 いま日本の空は、羽田空港の再拡張や成田空港の滑走路延伸、アジアの経済成長などを背景に、かつてない超過密時代を迎えようとしているが、一方で、滑走路の誤進入など航空をめぐる重大インシデントや不具合事例は後を絶たない。
 こうしたなか、我が国も批准している国際民間航空条約の第13付属書では、再発防止の観点から、航空事故調査と刑事捜査を厳しく分離すべきと定めている。しかしこの事故では、航空事故調査委員会が捜査当局へ事故調査報告書を嘱託鑑定書として提出するなど、この精神に反した対応が行われた。
 このような日本の航空事故調査のあり方は、航空事故の再発を防止するどころか、真の事故原因の究明を阻害し、もって事故の再発を招きかねず、国民の生命と財産に重大な影響を及ぼす極めて深刻な状況を生み出すものである。

 このようなことから全運輸労働組合は、反国民的な控訴審判決を断固糾弾するとともに、今後も国民の安全・安心を確保するための航空事故調査体制確立と、当該2名の管制官の無罪、および雇用と身分の確保に向けて、引き続き職場一丸となり、交通運輸労働者をはじめとした多くの仲間とともに闘い続ける決意である。

2008年4月11日
全運輸労働組合。

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