仙台と那覇の高層気象観測廃止に抗議する声明


 気象庁は、今年3月31日をもって、仙台管区気象台と沖縄気象台(那覇市)における高層気象観測を廃止することを決定した。高層気象観測とは、気球につけた観測装置を地上から約30kmの高さまで揚げ、上空の風向・風速、気温、湿度を直接観測しているもので、現在、国内18か所で毎日2回ずつ行われている。気象庁当局は、このうち上記2か所について、数値シミュレーションの結果予報に大きな影響はないとして、高層気象観測を廃止することとし、残る16か所についても引き続き見直しをしていくとしている。
 しかし、数値シミュレーションで得られる大気の状態はあくまで仮想的なものであり、現実をありのままに再現しているわけではない。しかも今回の検証は、わずか夏冬各1か月分と、災害発生時の6回32日分の実験しか行っておらず、これだけの結果で不要と結論づけるのは拙速とのそしりを免れない。人工衛星やウインドプロファイラなどによるリモートセンシング(遠隔測定)は、いくつかの仮定を基にした推定値に過ぎず、シミュレーションでも表現できないような、小規模の現象や、激しい現象を把握するためには、大気の状態を直接測定した高層観測データが依然として重要な意味を持っている。加えて、地理的に観測地点の間隔が広い沖縄では、隣接する石垣島や南大東島が故障などによって欠測した場合、広範囲にデータ空白域が生じる恐れもある。
 高層気象観測によって得られる観測値は、数値予報の初期値となっているだけではなく、数値予報を修正し、予報精度を改善するための資料としても利用されている。また、航空気象の分野では上空の細かな大気の状態を読み取り、航空路上の強い揺れや危険な空域を避けるための貴重なデータともなっている。
 さらに、高層気象データは、解明されていない気象現象の構造を研究し、予報精度を向上させるためには、なくてはならない基礎的な資料となっている。仙台においては、東北地方に冷害をもたらす「ヤマセ」の研究に、また、沖縄では、梅雨前線や台風の構造やメカニズムの研究に、これまでも唯一無二と言える貴重なデータを提供してきた。これらの現象は、いまだ解明し尽くしたとは言えず、高層観測データの重要性は、今後も増えることはあっても、無くなることは考えられない。
 われわれは、2か所の高層気象観測の廃止を決めた気象庁当局の高層観測軽視の姿勢に厳重に抗議する。加えて、これ以上の高層気象観測の削減を許さないため、各方面と協力してたたかいを進める決意である。

2008年3月25日
全気象労働組合中央執行委員会

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